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文化財保存修復研究所 刊行物?資料

第2号 2016-2017(平成28-29)年度

発刊にあたって

本年報では、2016年度から2017年度の弊所の活動についてご報告します。

2017年4月、文化庁に地域文化創生本部が設置され、組織も改編されました。2018年6月 「文化財保護法および地方教育行政の組織及び運営に閲する法律の一部を改正する法律案」が成立し、2019年4月から施行されます。改正法では 「文化財保護行政の推進力の強化」を謳うと同時に、 「文化財の計両的な保存?活用」が打ち出されたことがより注目されるところです。一連の動向は文化財の 「活用」に向けて大きく舵を切ったものとの見方も多く、文化財行政は大きな転換点を迎えています。

弊所では、 「地域文化資源の再生と活用」を大学が6年ごとに定める中期計画に明記し、取り組みを進めているところです。

澳门永利会平台は実技教育を擁する特色ある大学として、その研究能力を活かし文化財の再生、活用を図ってきました。法隆寺金堂壁画模写は専用の展示館で春秋に展示公開をしています。壁画は 1949年金堂の解体修理中に出火し、失われました。この惨事が翌年の文化財保護法制定の契機になったことはよく知られるところです。本学が再生した壁画模写は焼損前の姿です。

また、名古屋城本丸御殿障壁両も戦火で失われましたが、残された写真などの資料を基に本学卒業生の日本画技法に関する知識、経験との検討によって復元模写が制作され、往年の姿が蘇りつつあります。今や地域でも有数の文化資源、観光資源として多くの鑑賞者を迎えています。

地域の文化資源をいかに保護し、再生し、また活用するかについて、本学は長い取り組みと実績があり、その伝統を受け継ぐ弊所も所蔵先はじめ関係者とともに考え、課題解決への提案を行ってゆきます。

自然災害、特に予想される大地震による文化財の被災ヘの備えと有事対応への議論を促進することも弊所の重要な取り組みです。災害という観点から文化財保護を見直すことによって今後取り組むべき課題、必要な行動も見えてくると考えています。

2016年度から始まった 「災害と文化財」講座には、学外からも多くの参加者がありました。

弊所は文化財に関わる行政関係者、専門家の方々と連携して文化財の防災ネットワークづくりに積極的な役割を果たしてゆく所存です。

該当年度における委託研究は4件、受託事業(修理)18件を手がけ、年度をまたぐ規模の大きな修復物件も任せていただきました。最新の蛍光X線分析装置を導入するなど徐々に研究体制も整ってきました。

一方で、調査、研究のさらなる充実、日本画以外の領域への拡充が課題であり、目標です。

学内外の多くの方のご協力と所員の努力によって着実な歩みを記せた2年間でした。しかしながら、地域の文化財保存修復の拠点を目指す弊所にとってまだまだ努力すべき点、やるべきことは多く所員それぞれが自覚を深めねばならないと考えています。

皆様にはこれまでのご助力に感謝しますとともに、今後ともますますのご支援、ご指導をいただきますようお願いいたします。

2019年 3月

澳门永利会平台文化財保存修復研究所所長
北田 克己